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satou

satou

 

今季22SSからローンチとなった気鋭のブランド。

当店ではよくある?パターンで、今季は全国でも限られた、3店舗でしか実物を見る事ができません。

 

国内ブランドで経験を積んだデザイナーが、このコロナの真っ只中、独立し立ち上げられました。

詳しくはお伺いしてはいませんが、只でさえ簡単では無いブランドの立ち上げには、通常以上、恐らく多大な苦労があった事だろうと思います。

それだけで自分の店舗と重なってしまい、ご縁があれば応援したいと思って展示会に伺いました。

もちろん、単なる共感や同情だけでは取り扱いがスタートする訳ではありません。

しかし、ブランドのインスタアカウントの投稿を見てプロダクト自体も気になり、実物に触れてみたいと思いました。

 

展示会の率直な感想として、

「しっかりと芯があり、本当の意味で自分達の作りたいものを作っているブランド」だと思いましたし、とても素敵だと思いました。

素敵というのは、プロダクトそのものから滲む無骨な力強さや、立体的なパターンによるシルエットも勿論そうなのですが、

どちらかというとデザイナーの服作りに対する姿勢や舵取り、コンセプトに対して、そうだと思ったのです。

 

satouのブランドコンセプトは「直感」です。

デザイナー本人の幼い頃の記憶や祖父母からの血筋(に刻まれているであろう)記憶。

それらをデザイナーの「直感」によって、洋服として素直に表現しています。

そこに、日本国内でも失われつつある職人による伝統技術、素材、製法を効果的にミックスする。

結果として独創的なプロダクトが生まれ、それらは手に取る人々の記憶を刺激します。

 

デザイナーの実家は大分県の農家で、そこでの生活の日々の記憶を素直にプロダクトに反映しています。

それらは、祖父が着ていた作業着であったり、祖母の手作りのキルトであったり、曽祖母からもらったお守りのモチーフであったり。

そこに現代的なファッションとしての服のデザインを共存させるのです。

「作りたいものを作っている」、と表現したのは、それらが売り文句としての機能を度外視したものだからです。

「畑がモチーフだから、農家の作業着がモチーフだから、祖父の私服だから」。

そういったことが、デザイナーの意図通り、着用者の記憶を刺激することは大いにあるでしょう。

しかしながら、その動機の要素の一つにすることはあるにせよ、それらがファッションアイテムの服として最大の購買理由になることは多くはないと思うからです。

 

今は制作の過程やそれにまつわる物語を製作者は自由にコピペが出来、捏造とまではいかないものの、

まるで売り文句にする為かのごとく、意味の感じられない素材のアピールや生産工程を導入する様なブランドも出てきました。

だからこそsatouのプロダクトから感じる「自分が作りたいものを作る」という思いが稀有なほど純粋だし、至極誠実だと僕は感じます。

 

そして、そこに今季の当店のセレクトテーマである「矛盾」を感じました。

露出の少ないデビューシーズンだからこそトレンドのキャッチーなモチーフに走って少しでも知名度を上げよう、などということはしない。

 

ここで、大切なのでもう一度しっかりと明言しておきますが、分かりやすいアプローチではないにしろ、

プロダクト自体は完成度が高く、シルエットも美しく、現代的ファッションとして成立しており、凄く素晴らしいです。

 

プロダクトをご覧頂き、このブランドの美学を是非、体感してください。

 

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